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笼岛 みどり
2017年05月28日
毒を持つ植物の代表格として知られるトリカブトですが、実は生け花で広く用いられる、ポピュラーで育てやすい園芸種でもあります。育てるのも売り買いするのも合法。ホームセンターでも扱っているので、安心して手に入れてください。 多年草で、冬は地上部を枯らして越冬します。20cmほどの矮性種から1mを超えるものまで、種によって草丈は様々です。 名前の由来にもなったように、兜のように見える独特の袋状をした花を咲かせます。これはミツバチなど虫たちが奥まで入り込むことで効率的に授粉できるようにした工夫。ただし、花粉にも毒があるので、トリカブトが咲く季節になると養蜂家たちはミツバチを巣箱から出さないようにするそうです。
トリカブト(鳥兜)の花言葉
紫色の花は一見、ルピナスに形が似ていますが、ひとつひとつをよくみると烏帽子や兜のような姿をしています。小鳥が頭にかぶれそうなサイズなので、鳥兜(トリカブト)の名がつきました。 西洋でもやはり、花をかぶりものにたとえて名づけていました。英名「モンクスフード」は「修道士の頭巾」という意味。修道士のイメージから「厭世家」「人嫌い」という花言葉が生まれました。 騎士の兜にも似ているので「栄光」「騎士道」という意味もあります。 もうひとつの花言葉は「復讐」。理由はお分かりですよね…。
トリカブト(鳥兜)の基本情報科・属キンポウゲ科トリカブト属英名Monkshood、Helmet flower学名Aconitum原産地日本、東アジア、北半球の温帯域出回り時期1月~5月育てやすさ★★★★☆
トリカブト(鳥兜)の種類・品種
山野でよく目にすることから名づけられた「ヤマトリカブト」は1m50cmに達する高性種。 北海道に自生する「エゾトリカブト」は世界中の種の中でも、とりわけ高い毒性を有しています。 園芸種として最もポピュラーなのは、花つきのよい「ハナトリカブト」。生薬として利用されることも多い種です。
トリカブト(鳥兜)の育て方用土
市販されている「山野草の土」や、赤玉土7腐葉土3の組み合わせを用います。水はけを重視するので赤玉土を鹿沼土に変えてもかまいません。
種まき
ポットや育苗床にまき、浅く土をかぶせます。用土はピートモスがよいでしょう。発芽までは日陰で管理し、本葉が出てから徐々に日光に慣らします。
苗の選び方
葉が変色していない、節が詰まっているなど基本的な選び方に準じます。ショップによっては無毒の個体を扱っていることもあるので、毒が心配な場合、確認してみましょう。
植え付け
植え替えの際は、鉢土を崩さないように扱いましょう。根腐れしやすいので、鉢植えの場合は鉢底石を忘れずに。
水やり
多湿、乾燥ともに嫌います。表土が乾くのを待ってからたっぷりと与えます。水切れしやすい夏場は腰水も効果的です。
追肥
元肥にはリン酸やカリを多く含む化成肥料を用意します。春から初夏の成長期には遅効性のものをやや控えめに与えます。
剪定
伸びすぎた枝を切る程度ですが、開花期は花が重すぎて倒れてしまうことがあるので、支柱を立てます。その際も手袋は忘れずに。
病害虫
強い毒のあるトリカブトですが、春にはアブラムシがつきやすくなります。手でとらず、薬剤を用いる方が無難です。
アブラムシ
アブラムシは3月から5月に多く発生する害虫です。新芽や茎、若い葉や葉の裏にくっついて吸汁して株を弱らせます。春から秋に発生するので見つけ次第、駆除しましょう。
トリカブト(鳥兜)の育て方|まとめ
・花、花粉、葉、茎、根、すべてに毒があるので、取り扱う時は必ず手袋を着用しましょう。口に入れなければ害はありません。
・直射日光は苦手。半日陰で管理します。
・肥料焼けしやすいので、与えすぎに注意しましょう。
・種は秋に収穫し、砂と混ぜてから冷蔵庫で翌年まで保管します。
トリカブト(鳥兜)のその他色々日本三大毒草のひとつ
「ドクウツギ」と「ドクゼリ」、そしてトリカブトは日本三大毒草と呼ばれています。 ドクウツギは黒紫色の実に毒性があり、食べると呼吸困難を起こします。 ドクゼリはセリの葉やワサビの根に似ているため誤食が多く、呼吸困難、意識障害などをもたらします。 三種の中で最も毒性が強いのはトリカブト。ただし、毒性を弱める処理をほどこせば麻酔薬や胃腸の薬として用いることができるのです。
富士山はトリカブトの山!?
子どもは誰に教わったわけでもないのに、富士山の絵を描けるようになっています。私たちの記憶に深く刻みこまれている富士山ですが、実はトリカブトと深い縁があるようです。 生薬として扱われるトリカブトの根は「附子(ぶす)」と呼ばれます。富士山周辺には「オオサワトリカブト」がよく見られるため、「ぶす」が「ふじ」に転じ「富士」になったという説があるのです。 ちなみに富士山が最初に登場する文献は、奈良時代の『常陸国風土記』。ここでは「福慈(ふじ)」の字が当てられています。
トリカブトはなぜ危険なのか?
トリカブトの毒は口にさえ入れなければ大丈夫。ただし、樹液のついた手を口元につけてしまう可能性も。トリカブトを扱う時は必ず手袋をつけ、使用後はよく洗っておきましょう。 トリカブトは多年草です。育てている時はよく注意していても、やがて存在を忘れてしまい、庭草の間に雑草のようにまぎれていることがあります。根ごと引き抜かなければ、ずっと生え続けていることを覚えておきましょう。 最も危険なのは野山に出かけた時。ヨモギの葉によく似ているので、間違えて採取されることが多いのです。
花・植物を、もっと楽しみたい!!室内で楽しもう!
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