文章
笼岛 みどり
2017年05月28日
シュウメイギクは秋の日陰の庭に映える白や桃色の花を咲かせる宿根草です。漢字で書くと「秋明菊」でその名の通り菊のような花を咲かせますが、春に咲くアネモネに近いキンポウゲ科の植物です。シュウメイギクは貴船菊や秋牡丹などの異名もあり、欧米ではボーダーガーデンやジャパニーズガーデンには欠かせない植物ですが、実は中国原産の帰化植物で、山野や里山にも自生しています。一枝でも見栄えが大変良いため、華道の素材としてや秋の茶花としても大変喜ばれます。花はがくが花弁化したもので実際には花弁はありません。最近では八重咲のものや矮性のものもあります。
シュウメイギクの花言葉
シュウメイギクの花言葉は「薄れゆく愛」「淡い思い」「忍耐」
シュウメイギクの花言葉は「薄れゆく愛」「淡い思い」「忍耐」です。秋に花を咲かせ冬に近づくにつれてハラハラと散っていく様がまさしく恋の終わりの切なさを感じさせますが、この花言葉は近縁種であるアネモネに由来するようです。アネモネはギリシャ神話の花の女神フロラの侍女の名前に由来しています。フロラには西風の神ゼピュロスという恋人がいましたが、ゼピュロスは美しい侍女アネモネに恋をしてしまいます。起こったフロラはアネモネを追放してしまいます。ゼピュロスはフロラを納得させるためにアネモネを花の姿に変えたと言われています。そこから薄れゆく愛や淡い思いといった切ない恋心の花言葉が生まれたのでしょう。「忍耐」は寒い冬に耐え再び春に芽を伸ばすシュウメイギクの強さに由来します。
シュウメイギクの基本情報科・属キンポウゲ科 イチリンソウ属英名Japanese anemone,Jalanese thimbleweed学名Anemone hupehensis var. japonica原産地中国出回り時期9月~10月育てやすさ★★★☆☆
シュウメイギクの種類・品種
シュウメイギクの原種は草丈が50~80cm程度で濃桃色の八重咲です。現在多く流通している園芸種は、日本の原種と台湾原産のタイワンシュウメイギクを交配したもので、欧米で品種改良されたものが逆輸入されて定着しました。タイワンシュウメイギクは白花で100cmを超える草丈があります。最近ではヨーロッパで交配された矮性のシュウメイギクもあり、草丈が40cm程度にしかならず花色も豊富なので鉢植えに向きます。
シュウメイギクの育て方用土
肥沃で保水性の良い弱酸性の土壌を好みます。土壌がアルカリ性に傾くと極端に成長が悪くなりますので、コンクリート塀や家の基礎などコンクリートの近く、消石灰を撒くような場所には植えないように注意しましょう。地植えの場合湿り気の多いところが好きですので保水力が足りない場合は腐葉土を3割程度混ぜ込んでやり、マルチングしてあげると良いでしょう。落葉樹がある場合はその近くに植えてあげると落ちた葉が冬場のマルチング代わりになります。鉢植えの場合は小粒赤玉土と腐葉土を7:3に混ぜたものに緩効性肥料を混ぜ込みます。
種まき
綿毛であって風で飛ばされやすいので、種を採る場合は袋などを被せて保護します。12月~1月頃地上部が枯れ綿毛が浮いてきたら採取の適期です。種は鉢植えと同じ用土に播き、覆土せずに乾燥しないように管理します。5月~6月頃間引いて良い苗を選抜し、翌年の3月~4月頃1株ずつ植え付けましょう。
苗の選び方
開花前後の株が流通しますので、花の形や色の良いものを選びましょう。種を採る目的がある場合は一重の品種を選ぶようにします。また、葉や茎がしっかりしており病害虫に侵されていないものを選びましょう。管理の仕方によっては株に白絹病が出ている場合がありますので、株元を確認して白いカビのようなものがないものを購入しましょう。
植え付け
植え付け適期は芽が動き始める直前の3月~4月です。開花株を購入した場合は9月~10月でも植え付けられますが、しっかり水やりをして冬までに根が土になじむようにしましょう。地植えの場合は半日陰に根鉢の倍程度の広さを掘り返して元肥と腐葉土を十分に混ぜ込んで根鉢を少しだけほぐして植え付けます。鉢植えの場合は株がすぐに増えるので、やや大きめの鉢に植え付けましょう。根が回りやすく根詰まりを起こすと株が弱るので、鉢底で根の回り具合を適宜確かめるようにしましょう。
水やり
地植えの場合は半日陰でじめっとした感じの場所であれば水やりは必要ありません。鉢植えの場合は夏場は特に株全体が熱くなり根が傷みますので、直射日光が当たらない風通しの良い日陰で養生しながら夕方に水を与えるようにしましょう。また、宿根草ですので冬場も土が乾燥しないように適宜水を与えるようにして下さい。
追肥
花後のお礼肥として緩効性の化成肥料か油粕を株から少し離れた場所に置きます。根の先端部分で肥料分を吸収するので、株元においてもあまり効果がありません。鉢植えや旺盛に成長している株では葉が出始めてから5月くらいまで月に1回液体肥料を水代わりに与えると良いでしょう。気温が高くなり始めたら肥料を与えないようにします。
剪定
花後は種を採取する予定がない場合は花茎を切ります。また、冬場は地上部が枯れますので、地際から刈り込んでおきましょう。成長が良いと春からランナーがどんどん伸びてきます。そのままにしておくと植え付けた部分からどんどん広がっていくので、必要なもの以外は切り取りましょう。
病害虫
害虫はアブラムシが新芽やつぼみにつきやすいです。日の当たる場所に植え付けた場合は夏場にハダニが出ることもありますので、発生初期に殺虫剤を用いて防除しましょう。病気はうどんこ病がつきやすいので、株が込み合って風通しが悪くなっている場合は株分けなどをして風通しが良くなるようすると良いです。地際の部分に白絹病が出ると株が弱りますので、早めに殺菌剤で防除します。
アブラムシ
アブラムシは3月から5月に多く発生する害虫です。新芽や茎、若い葉や葉の裏にくっついて吸汁して株を弱らせます。春から秋に発生するので見つけ次第、駆除しましょう。
ハダニ
ハダニは気温が高いところや乾燥している場所に発生します。暖かい時期に発生しやすく植物の葉から栄養を吸収して弱らせます。また、弱った植物はハダニの被害に遭いやすく、被害も大きくなりやすいです。数が増えて被害が大きくなってくると、葉緑素の不足によって光合成ができなくなり、生長不良になったり、植物自体が枯れていきます。
うどんこ病
植物の葉などに粉をまぶしたように白くなるのがうどんこ病です。うどんこ病は5月~6月と9月~10月に発生しやすい病気で、はじめはぽつぽつと白く粉をふいている感じに見えますが、悪化してくると葉の全面が真っ白になっていき、植物全体に蔓延すると茎や果実にも発生し、とても厄介です。早めに対策しましょう。
白絹病
おもな発生時期は6月から9月で、発生部位は根と茎です。カビ(糸状菌)による伝染病で、菌糸が網のように張り立ち枯れてしまう伝染性の病気です。菌が強いのでかかってしまった部位をそのままにしておいたり、よけてほかの所に置いておいたりしても、病原菌は土の中で越冬してしまうため、春に暖かくなってから活動しはじめてしまいます。発見したらほかの株とは分けて置き、すぐに焼却処分や廃棄処分をするようにしましょう。
シュウメイギクの育て方 まとめ
・シュウメイギクは半日陰で栽培しましょう。直射日光は苦手です。
・湿り気のあるところが大好き。水枯れを起こさないように注意!
・株が込み合って来たら掘り返して株分けをして植えなおしましょう。
・弱酸性土壌が好きなので、コンクリートの近くには植えないように。
シュウメイギクのその他いろいろシュウメイギクの増やし方
シュウメイギクは株分けで増やすことができます。特に鉢植えの場合はすぐにいっぱいになってしまうほど増えますので、葉が展開する前に株分けをして株を更新してあげると良いです。また、春以降になるとランナーが地下茎から伸びてきます。地に着くと子株ができますので、掘り取って鉢植えにしたり、別の場所に植えてあげましょう。根伏せでも増やすことができるので、根を5cm程度に切り取ったら清潔な用土に寝かせて覆土します。
中国原産なのになぜジャポニカ?
秋明菊や貴船菊という名前で親しまれており、学名や英名にまで日本とついているシュウメイギクですが、中国が原産の植物です。万葉集にはシュウメイギクの記述がないためおそらくそれ以降に中国から伝わったのでしょう。シュウメイギクは伝来後に京都の貴船を中心に野生化をしたようで、そこから貴船菊の別名が付けられたと言われています。これを元にしてジャポニカの学名がついたのでしょう。中国から伝来したときには「秋冥菊」と黄泉の国の花という意味の名前でしたが、「明」の字に改変されました。現在では様々な花の種類があるシュウメイギクですが、その品種改良は日本ではなくヨーロッパを中心に行われました。現在でもヨーロッパを中心に大変人気のある花で、耐寒性があり宿根草であることから晩秋を彩る花としてボーダーガーデンに良く植えられています。
シュウメイギクで家畜が中毒に。きれいな花には毒がある?
シュウメイギクはキンポウゲ科の植物ですが、このキンポウゲ科の植物は毒をもつ植物が非常に多いことが知られています。シュウメイギクも実は全草にプロトアネモニンという毒があります。放牧している牛がシュウメイギクの芽を誤って食べてしまって中毒を起こすことがあります。人が食べてしまうと胃腸障害が起こるほか、草の汁で皮膚炎を起こすことがありますので注意が必要です。山菜として食べるニリンソウと似ていますので、特にシュウメイギクが自生している里山でニリンソウを採る時は注意するようにしましょう。
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